それはITマネージャーへの、魅惑的なささやきから始まる。
あなたの会社のイントラネットの混沌とした状況をコントロールしたくはないかい?企業内で保持している知的資産に、一元化したアクセスを提供したくはないかい?私について来なさい。私はその答えを持っている。この小さな箱の中にね。
パワー、知的資産、素晴らしい装置群。一体どんな人間がこの電子世界の桃源郷の誘惑に抗うことが出来る?一時の試験的なプロジェクトだ。何か問題が起きても対した被害はない...
かくして、彼らは企業内ポータルベンダーとの契約書にサインをする。さあ、その新しいソフトウェアの箱を開けて、その全ての災厄を解き放て...
とは言うものの、企業内ポータルのベンダーが現れる前から、その災厄のいくつかは既に自分達の廻りに存在している。しかしながら、疑うことを知らないITマネージャーにとって、企業内ポータルはさらなる苦しみの世界へのポータル(入り口)となってしまう。
企業内ポータルは利用する者に、非常に難しい問いを投げかけ、注意を惹かせ、広範な範囲の人々を関与させる。そしてITと呼ばれる世界が伝統的に経験したことのない(そして大抵、他の世界のどこにもない種類の)技量を必要とさせる。
あなたの好奇心を満たすために、企業内ポータルの導入をちょっとでも検討しようとしているITマネージャーに降りかかる、最も興味深い以下の3つの災厄に焦点を当て話を進めてみよう。
企業内ポータルとは一体なんなのか?この問いかけは様々な意見の詰まった蜂の巣を混ぜ返すような無邪気な質問のように思える。
(そして実行する必要がない人々などがその無邪気な質問を出すのだが)
あがる意見はこんなものだ。
支配的なメタファー
はたして企業内ポータルとは、アプリケーションやeサービス、クロスファンクショナルなビジネスプロセスを融合させるために、つらい義務的な仕事を増やすプラットフォームなのだろうか?それとも本当に企業が所有する知的財産の管理を行う道具なのだろうか?コラボレーションとコミュニケーションを円滑にするためのボトムアップを可能にするものなのか、それとも公式な会社発表を周知せしめるためのトップダウン方式のチャンネルなのか?みんなの答えを一致させることは可能なのだろうか?
真実がどうであれ企業内ポータルがもたらすであろう「ITの恩恵」を受ける「同僚」は、このエキサイティングな新しいパラダイムに対する準備をしておいた方がいい!
観衆
ITマネージャーは自分が会社の従業員によかれと思い、そのツールを導入したと考えている。しかしながらアナリスト、専門家、ベンダー達は「企業内ポータルの本当の投資効果が出るのは、顧客、仕事上のパートナー、サプライヤーと自社の社員を繋いだ時だ」なんて言いだす。あなたは事を大げさに考えている人か、小さく考えている人か、どちらだろう?さあ、この自分達をいらいらさせるセキュリティの問題について考え、そして作戦を実行に移そう。
資源
あなたは社内の全てのコンテンツに一元化したアクセスをもたらすことは野心的な夢物語であると考えていた。しかし今、ユーザーである社員は、外部にあるサードパーティのデータベースにもシームレスにアクセス出来ることを望んでいる。会社の幹部達はASPというビジネスモデルに驚喜し、社内では、あなたの導入した企業内ポータルを運営するチームが、会社の全書類データを一本化するという噂すら出ている。
長い目で見れば、これらの拡張性に富んだ企業内ポータルの定義は良いことであろう。それは、コミュニケーションを社内のみならず社外にまで広げ、企業のコラボレーション能力と生産性を向上させていくのだから。
しかし、短期的には、ITマネージャーは自分の人生の戦いに巻き込まれる。なぜなら理想の企業内ポータルを運営することが現実の問題によってがんじがらめになっているのに、社内の人々の期待だけはまさにインターネットの速度で駆けめぐるからだ。
最も強い(有能な)ITマネージャーだけが、強固でスケーラビリティに富んだ、しなやかな地盤を造り上げるのに必要な時間と労力を節約することが出来る。(企業内ポータルの恩恵を享受することが出来る)そしてそれ以外の(能力の足りない)ITマネージャー達は、この様々な側面を持った企業内ポータルは彼らにとってのハーデスの岩になるであろう。
※編注)「ハーデスの岩」...ギリシャ神話でコリント(Corinth)の王シシュフォス(Sisyphus)が災いにより地獄に堕ちた時に冥界の王ハーデス(Hades)より与えられた罰の岩のこと。シシュフォスは山頂に大きな岩石を苦労して持ち上げるが、置いた途端にその岩は崩れ山の麓に落ち、また麓から大岩を持ち上げなくてはならなかった。転じて、企業内ポータルをまとめる能力のないITマネージャーが次から次に発生する大きなトラブルと矛盾に苦しめられることを指す。
企業内ポータルはしばしば、中央集権化されたトップダウン方式のソフトウェアとしてその生を受け、従業員に対して、eサービス(彼らに有益な書類様式、タイムカード、そして費用の払い戻し等)と企業内の情報に容易にアクセス出来るコアなセットを与える。
ひいき目に見れば、イントラネット環境に、てこ入れをし、より進んだサービスをより低コストで従業員に提供する為にも、企業内ポータルの運用を開始するのによい方法だと言える。
しかし、悪い面に目を向ければ、これまでのビジネスのやり方は終わりだ―あなたの会社を絶滅恐竜にしない95の法則が提起している下にあるグラフは、非常に的を得ている。 「企業は一般的に、トップダウンでイントラネットを整備し、人事方針やその他の企業情報を配布しようとするが、労働者はそういったものを極力無視しようとしている。」
どちらにせよ、これは氷山の一角にすぎない。信じるかどうかはともかく、従業員はお互いから学ぶことに興味を持っている。シニアマネージャーが、そのトップダウン方式の企業内ポータルが、従業員の希望する機能の80%しか実現しないと公言しているにも関わらず、検索結果のログはまったく別の結果を示している。

我々が行った企業内ポータルの検索結果のログ分析では、全クエリの80%が他と重複しないキーワードであった。 従業員はみな同じ情報を探しているわけではない。彼らは幾千万にもおよぶさまざまな情報をそれぞれ探しているのだ。言い換えるならば彼らは企業内ポータルを超越したもの、平々凡々なイントラネットよりももっと深い何かを見ている。彼らは同僚が創造した情報を知りたがっているのだ
。このことを解決させるために、ドキュメントの全文検索機能を設置することで鎮圧させようとするのはけっして正しい方法ではない。彼らは慣れ親しんだコンテンツマネジメントソフトウェアを購入することで、これらに着手しようとするが、すぐに混沌とした知的資産の洪水によって破壊されてしまう。 彼らはポータル内のコンテンツを生成する過程の全ての局面で議論し合う必要がある。つまり、企業全体に健全な知識の流通を奨励する努力をすることである。
この議論はITマネージャーにとっては全然居心地の良い物ではないだろう。自身の統制力と権威は小さく、責任と心配だけは大きいのだから。
この不幸なITマネージャーにふりかかる第三の災厄のことを決して忘れてはいけない。あまりにも幅広い企業内ポータルというものの定義と、冗長なコンテンツ、そして漫然としたサービスのおかげで、ドキュメントのカテゴリ分けと全文検索システムはもはや意味をなさない。従業員の不満の嘆き声はやかましく、そしてそれは延々と続く。
この問題を解決することはそれほど簡単なことではないことが判明する。メタデータを定義し、ボキャブラリーを正し、類義語のソートをしっかり行うことが必要だ。そして、一元化した検索・閲覧機能の運用のために作られた、フレキシブルでないキーワードのソートを改善した、新しいインターフェースを作りあげなくてはならない。
言い換えるなら、あなたは、専門知識と教養と十分な経験を持ち、この困難に挑むプロフェッショナルのインフォメーションアーキテクトを雇う必要があるということだ。
不幸なことに、多くのITマネージャーはこの仕事の大変さを全く理解していない、それが手遅れの状態になるまで。苦痛に満ちた時間を1年か2年過ごしてから彼らは初めて専門家に電話をかける。そしてこのために、彼らはどうにもならなくなった脆弱な基盤とフラストレーションのたまった従業員を抱えてしまうこととなる。このダメージを回復するのには膨大な時間と労力を注ぐ必要がある。
いくつかの優良ポータルベンダーの示す明瞭なビジョンが実際に有用なものであることはいいニュースである。自分達は正しい方向に進んでいる。 しかし悪いニュースは、ITマネージャーが慎重にその小さな箱を開け、中にあった素晴らしい装置を手にした時に、自分達が予想していたよりもずっと長く苦しい状況が続くことだ。
あなたがこの企業内ポータルの導入という危険な試みをしようとする時には、ギリシャ神話のある話を思い出して欲しい。パンドラの箱にはたった一つだけいいものが入っていたことを。
「彼女は好奇心でそのパンドラの箱を開けてしまった。中にいた全ての災厄は箱を飛び出し、地球上に散らばった。彼女は急いでふたを閉めようとしたが、一つを除いて、すべて逃げ出した後だった。箱の底に横たわっていたその一つとは「希望」であった」